夫人ということは、ヴュイヤールの妻なのか母なのか。
【鑑賞の小ネタ】
・ヴュイヤールはナビ派の画家
・装飾画も多く手掛ける
・日本美術の影響あり
・生涯独身
・この作品は盗難の経験あり
過去記事(大原美術館:ふさがれた窓)でも紹介しましたが、この作品『薯をむくヴュイヤール夫人』は盗難の経験があります。盗難にあったその他の作品と同じく、小型の作品で、無事に戻って来て本当に良かったと思います。
ヴュイヤールはナビ派(「ナビ」とは預言者を意味する。19世紀末パリで活躍。自らを新しい象徴的、主観的な芸術の創始者として主張。前衛的な芸術家集団で、ポスターやグラフィックアート等、幅広い領域で活動)の画家です。グループにはその他、 ポール・セリュジエ、モーリス・ドニ、ピエール・ボナール、アリスティド・マイヨール、フェリックス・ヴァロットンなどがいます。大原美術館には、セリュジエ、ドニ、ボナール、マイヨールの作品がどれも所蔵されていて、印象派のみならず、ナビ派の作品も充実していますね。
ヴュイヤールは生涯独身で、母親と暮らしていたようです。というわけで、『薯をむくヴュイヤール夫人』のヴュイヤール夫人はまずお母さんですね。母親の日常の姿を描いた作品を他にも制作しています。
お母さんの表情は、どの作品も伏し目な感じで描かれているので、読み取りにくいのですが、全体的に貫禄のある女性ということは分かりますよね。ちなみにお母さんは、裁縫工房を経営していたそうですョ。そうして見ると、お母さんの服装、何だかお洒落ですよね。壁紙やテーブルクロスにもこだわりを感じます。絵になる室内装飾だったようですね。
そしてヴュイヤールは、装飾絵画も数多く手掛けているので、何かとお母さんの影響大だったのかもしれませんね。
ヴュイヤールの装飾絵画がこちら。
5連の装飾板画です。当時、個人の邸宅のサロンや食堂の壁の羽目板画として流行していたそうです。日本の屏風絵のようですね。よく見ると、はっきりとした線で描かれているし、奥行きもあまり感じられません。日本美術の影響を受けていると考えられているそうです。
ヴュイヤールの作品の色合いは、とても穏やかですね。茶系が多いためか、あたたか味を感じます。ルドンが描いたヴュイヤールがこちら。
ヴュイヤールはフランスの画家です。ヴュイヤールが生きたフランスといえば、多くの芸術家が集まって来ていた時代です。波乱万丈な生活を送っていた画家たちも多くいました。そんな中、生涯独身で、母親と過ごし、お酒もたしなまなかったというヴュイヤール。生き方や画風から、穏やかな性格が彷彿とされるという記述が多く見られました。
ヴュイヤールは、家族や室内など身近なものを多く描いた画家でした。落ち着いた優しい人だったのかもしれませんね。