美観地区に最も近い山、鶴形山(標高40メートル)に鎮座する阿智神社の狛犬です。
文化十四年 丁丑八月 と彫られています。 文化14年は1817年なので江戸時代ですね。丁丑(ひのとうし)もこの場合、1817年のことで問題ないと思います。もう200年以上経っているんですね。
今回注目して頂きたいのは、これです。👇
阿智神社へ向かって左側の狛犬にだけ、角があるんです。一般的に狛犬の口が、阿吽(あうん、口を開けた阿と口を閉じた吽)になっていることが多いということは知っていたのですが、角についてはノーマークでした。何度も阿智神社にお参りしているのに、今まで気づきませんでした。
狛犬について調べてみました。一般的に「狛犬」は、右側が阿形(あぎょう)の獅子像で、左側が吽形(うんぎょう)の狛犬像なんだそうです。中国から持ち込まれた一対の獅子像が、日本独特の「獅子・狛犬」という形式に変わっていったようです(参考資料:狛犬ネット)。 なんと、右側の狛犬は獅子だったんですね! そして、 阿吽の形になっているのは日本特有の形式のようで、中国の獅子像はほとんど口が開いているそうです。
狛犬像は、古くは角を持っていて、鎌倉時代後期以降になると様式が簡略化されたものが出現し始め、昭和時代以降には、角が無いものが多くなっていったということです。
「狛犬」については諸説あって、現在様々な形式が混在している状態のようです。角があったりなかったり。角がなく、形としてはどちらも獅子のように見える像であっても、まとめて「狛犬」と呼ぶのが定着しています。
ちなみに狛犬とは、獅子や犬に似た日本の獣で、想像上の生物とされています。そして 角がある像は、まず狛犬と考えて問題ないと思います。
奈良の春日大社第一殿の獅子(右)と狛犬(左)です。鎌倉時代に制作されたものと判明しています。狛犬には角がありますね!
ところで、狛犬のモデルは何だったのでしょうか? 調べてみると、兕(ジ)という、めでたいとされる想像上の 動物が見つかりました。
兕(ジ)は、中国の奇書『山海経』に記載される水牛に似た一角獣です。狛犬に直接つながる霊獣ではないかと言われています。
その他、中国のカイチ。
カイチは長い角を持つ一角獣で、正義や公正を象徴する霊獣です。なかなか勇ましい姿ですね。
そして、朝鮮半島のヘテ。
中国のカイチが朝鮮半島に伝わり、ヘテと呼ばれ、独自の進化を遂げたようです。でも角がありませんね。文献上では一角獣と認識されているようです。なぜ角が無くなったかは不明ということです。 雰囲気は、ヘテが一番狛犬に似ていると思いませんか?
何れにしても、狛犬のモデルは、中国由来の想像上の動物(中国の一角獣)だったようです。「犬」ではないということですね。
改めて阿智神社の狛犬を見てみてください。口角が上ったよう(吽形なんですが) に見えませんか? しかも頭にちょこっと角があって、なんだかとてもチャーミングです。また一つ観光スポットが増えたような気がしました。(^-^)