作品名から想像すると、海の絵でしょうか?空にも見えますね。
【鑑賞の小ネタ】
・小説「白鯨」がテーマ
・ポロックは抽象表現主義の代表的画家
・不透明水彩絵具で描かれている
・ミロの影響あり
ジャクソン・ポロックというと、次のような絵をイメージする人が多いのではないでしょうか?
『海のような変化』はドリッピング(絵の具を垂らして描く)という技法で描かれています。ポロックは1947年頃から本格的にドリッピング作品の制作を開始しているようです。ただ、1943年頃からドリッピングやポーリング(絵の具を流し込んで描く)を試み始めているので、『ブルー-白鯨』1943は、ドリッピングの手法に本格的に移る前の興味深い作品ということになりますね。
『ブルー-白鯨』 は、アメリカの小説家ハーマン・メルヴィルの「白鯨」がテーマとなっているそうです。そして小説「白鯨」は、ポロックの愛読書だったようで、小説に出てくる捕鯨船ピークォド号の船長ハイエブの名を、飼い犬につけていたそうですョ。
『ブルー-白鯨』 は、全体的にかなり抽象化されているものの、よく見ると、なんとなく形が分かるものが数多く描かれているように思います。白鯨、波(大波)、海の生物(怪物?)など。どの部分がどのように見えるかは、例によって人によって違うと思います。オレンジ色と黄色が印象的ですが、黄色の部分は、月が海面に映っているように筆者には見えます。そして、最も気になったのは、絵の中央に格子模様の線があって、その線の中に●や■や✖が描かれていることです。何か意味があるのでしょうか?結構きっちり描かれているので、余計気になります。 捕鯨船の乗組員が、休憩中に楽しんだ ボードゲームだったりするとおもしろいですよね。
1943年頃の作品をいくつか紹介します。
比較的、形が保たれているように思います。
ポロックは、1938年頃~1942年頃、精神科に通院しています。アルコール依存症の治療としてユング派の精神分析、そして絵画療法を受けています。深層心理に潜む無意識の芸術について、既に注目していたかもしれませんね。
また、ドリッピング作品へ向かう前のポロックは、ピカソやミロの影響を多分に受けています。 『ブルー-白鯨』は、特にジョアン・ミロ(1893-1993)の影響が強いように思います。大原美術館にはミロの作品も所蔵されていますので、ぜひ見比べてみてほしいものです。