ピカソの描く絵が立体になったような作品だなと思いました。
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アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)
『キュビスム的コンポジション―男』1926
石膏に着色
【鑑賞の小ネタ】
・ジャコメッティ初期の彫刻
・同じ形の作品がいくつかあり
・アフリカやオセアニアの影響あり
・キュビスム、シュルレアリスムの影響あり
抽象絵画などの作品名でよく見かける「コンポジション」。「構造、組立」を意味する言葉ですが、絵画や写真などでは「構図」とされるようです。キュビスムは、複数の視点から眺めたものの形を平面上に合成して表現しようとした芸術運動ですね。ピカソやブラックが有名です。
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『ギターを弾く女性』1913
『キュビスム的コンポジション―男』と ほぼ同じ形の作品がいくつかあるようです。
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大原美術館の作品は、石膏に着色です。着色が有る無しで、随分見え方が違うものですね。
過去記事(大原美術館:『ヴェニスの女Ⅰ』ジャコメッティ)で紹介しましたが、後にあの細い作品になって行くとは思えない感じのどっしりとした 『キュビスム的コンポジション―男』 シリーズです。1920年代の作品は、キュビスムの影響の強い作品が多く見られます。
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次の作品は、アフリカのダン族が儀式に用いるスプーンに想を経て、制作されたようです。
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ブロンズ
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ちなみに、ダン族 (コートジボワールの北西部に住む) の仮面は、ヨーロッパで人気の高い仮面なんだそうですョ。
ジャコメッティは1922年にパリへ転居していて、ロダンの弟子のアントワーヌ・ブールデルに学んでいます。この頃、ピカソやミロと交流していて、シュルレアリスム(超現実主義)の影響を受けたようです。シュルレアリスム運動が理想としていたのは、「夢と現実の矛盾した状態の肯定」でした。教科書でよく見かけるシュルレアリスムの画家と言えば、サルバドール・ダリ、ジョルジョ・デ・キリコ、ジョアン・ミロ、パブロ・ピカソなどですが、その作品はどれも不思議なものが多いように思います。静けさの中にちょっと不安になるような何かを感じます。かなり内面に向かうこのシュルレアリスム運動、ジャコメッティも色んなことを考えたのでしょうね。後の極端に細い彫刻に見られる「空虚」の世界観が出来上がるのも分かる気がします。
ジャコメッティは、スイスの100フラン紙幣のデザインになっています。
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裏面の彫刻は「歩く男」です。細い男性が歩いていますね。こんなに細いのに、なぜか力強く前へ進んでいるように見えるのが不思議です。
【追伸】
大原美術館には、ロダン、その弟子のブールデル、その教え子のジャコメッテイの彫刻が展示されています。併せて鑑賞すると良いかもしれませんね。