猫が2匹、かわいいですね。
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ピエール・ボナール(1867-1947)
『欄干の猫』1909
【鑑賞の小ネタ】
・ボナールはナビ派の画家
・日本美術の影響あり
・左下の人はボナールの妻マルト
・欄干の形状が謎
・2匹の猫は何猫?
絵筆のタッチが印象派っぽいですが、ボナールはナビ派(神秘主義的で装飾的な画面構成が特徴)のフランスの画家です。最後の印象派と言われることもあるそうですョ。またボナールは、日本美術の影響を強く受けていて、屏風のような作品も制作しています。
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『乳母たちの散歩、辻馬車の列』1897
『欄干の猫』に戻ります。猫が2匹、欄干の上にいますね。色はどうでしょう?白色、黒色、薄い茶色、灰色が見えます。灰色はもしかしたら、影かもしれませんね。白、黒、茶となれば、三毛猫でしょうか?
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三毛猫は種類ではなく、白、黒、茶の3色の毛をもつ猫のことをいうそうです。原産国は日本ですね。そして、猫好きでなくても広く知られていることかもしれませんが、三毛猫のほとんどがメスです。オスが生まれる確率は数万分の一と言われています。また、短くて丸いしっぽは日本猫にしかいないとされていて、西欧や北米では、ジャパニーズボブテイル、愛称「ミケ」として珍重されているそうです。
ボナールは「ナビ・ジャポナール(日本かぶれのナビ)」と呼ばれていたようなので、『欄干の猫』の猫も、三毛猫だったいいなと思いました。
猫の種類はともかく、ボナールは猫好きだったようです。多くの作品の中に猫が登場しています。
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『白い猫』1894
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『子どもたちの昼食』1897
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『子どもと猫』1906
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『田舎の食堂』1913
『田舎の食堂』の中の子猫、見つけられましたか?
『欄干の猫』のその他のモチーフを見てみます。右上の柳のように枝垂れている植物は何の木でしょうか?葉っぱの色と形から、筆者にはオリーブのように見えるのですが、枝垂れているオリーブの木を見たことがありません。剪定せずに大木になったら、このように枝垂れるのでしょうか? また、中心に描かれている赤い花、これは、ゼラニウムのように筆者には見えます。フランスではバルコニーを飾る人気の花なんだそうです。
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ただ、絵の中の赤い花は丸い花瓶に生けられてるように見えます。ゼラニウムは基本的には鉢植えだと思うので、これは問題ですね。そして豆知識なのですが、ゼラニウムは防虫効果があるようです。 ちょっと鉢を動かそうものなら、葉(たぶん葉だと思います)が擦れてかなり匂います。そのため窓辺に置くと、室内への虫の侵入を防いでくれるんだそうです。この絵の場所は、屋内なのか屋外なのかよく分かりませんが、屋内と屋外の間のような所ではないかと筆者は思っています。ゼラニウムが置いてあってもおかしくない場所かもしれませんね。
何れにしても、絵の中の植物の判定は難しいです。
最後に、左下の小さな人です。妻のマリア・ブールサン(通称マルト)なんだそうです。1893年に出会って以降、ボナールの作品に描かれる女性は、ほとんどマルトです。最初、大人にしては小さいので子どもだと思って見ていました。妻マルトが描かれていると知ってからも、ちょっと違和感がありましたが、次の作品で納得しました。
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『棕櫚の木』1926
手前の女性、もちろんマルトです。スッと入れ込むように描いていますね。ちょっと『欄干の猫』のマルトの描き込み方に似ていると思いました。マルトが中心に描かれている作品も数多くあるので、この描き込み方はどうよ?と思っていましたが、ボナール的にはありなんですね。むしろ、いつもどこかにマルトです。
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『犬を抱く女』1922
マルトを中心に描いていますね。この他、裸婦像等、ボナールはマルトを描いた作品を数多く残しています。
【おまけ】
欄干の幅、どう思いますか? 広いような狭いような…。 花瓶が猫に倒されそうな…。