美観地区を歩いていると、路地と建物の外壁の境界あたりに、趣のある工作物を見かけます。
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昔ながらの町家でよく見られる「犬矢来(いぬやらい)」というものです。犬?と思ったので、由来を調べてみました。
細長い通路や平地部分を、建築用語で「犬走り」と言います。建物の軒下の空間は、「犬走り」に相当します。確かに散歩中に犬がよく通りそうな空間ですよね。そして犬は、大抵、壁にオシッコをひっかけます。外壁がオシッコで汚れるのを防ぐために作られたのが「犬矢来」ということだったようです。
「矢来」とは竹や丸太で作った仮の囲いのことです。また「やらい」という言葉には「遣(や)らい」という漢字もあって、これは「追い払うこと」という意味になります。何れにしても犬のオシッコ除けですね。
犬のオシッコ除けから始まったであろう「犬矢来」は、その他の実用性も高かったようです。道路から泥がはねて外壁が汚れるのを防いだり、道路との境界線や泥棒除けの役目も果たしていたそうですョ。劣化したらその部分だけ取り替えたら良いわけですから、とても効率的ですね。
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「犬矢来」に注目して美観地区を歩いていると、違うタイプのものが目に入りました。 場所的には、「犬矢来」の設置場所と同じだと思うのですが、形状がかなり異なっています。
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「犬走り」の空間を、柵でしっかり囲んでいますね。
これは、「駒寄せ(こまよせ)」と言うそうです。馬に乗って来た客が、手綱をくくり付けたものの名残りと言われますが、人馬の侵入を防ぐために設けられたという説もあるようです。そうなると、犬除けじゃなくて、馬除けですね。
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「犬矢来」と「駒寄せ」、 現在の基本的な役割は、ほぼ同じとみて良いと思います。通りの景観的にもなかなか良いですよね。
【追伸】
前出の「犬矢来」が見事な「吉井旅館」、坂本龍馬が立ち寄ったという話があるようですよ。
2022年1月現在の吉井旅館の犬矢来はこちら👇
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木製でなく、竹製のものになっています。
竹製のものを木製の犬矢来の上に被せたんでしょうか?
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近くに寄って見てみました。
本物の竹で丁寧に作られた犬矢来でした(^-^)