インパクトの強い作品です。色使いも凄いですね。
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ポール・ゴーギャン(1848-1903)
『かぐわしき大地』1892
【鑑賞の小ネタ】
・ゴーギャンはゴッホの友人
・南国のタヒチで描いている
・エデンの園やイヴとの関係性
・浮世絵や七宝焼きの影響
ゴーギャンはフランスを代表する画家です。南フランスのアルルでゴッホと共同生活したことは有名ですね。結局2か月でけんか別れしましたが、その後、南太平洋の島、フランス領ポリネシアのタヒチへ渡っています。この女性は、タヒチでゴーギャンと過ごした現地の14歳の少女、テハアマナ(通称テフラ)です。ゴーギャンはタヒチで何人かの少女と過ごすのですが、その中の1人です。
『かぐわしき大地』は、テレビ東京の番組「美の巨人たち」で、「原始のイヴ」とも呼ばれると解説されていました。アダムとイヴのあのイヴですね。
『異国のエヴァ』という女性のポーズがよく似ている作品があります。『かぐわしき大地』と関係が深そうですョ。こちらです。
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ポール・ゴーギャン
『異国のエヴァ』1890-1894
左手の手のひらの向きが違いますが、全体的によく似たポーズをとっていますね。『異国のエヴァ』は、タヒチへ渡る以前に描かれたもので、これから向かう南国の島を想像して、「エデンの園」として表現しているようです。この作品のエヴァの顔は、母アリーヌの写真に基づいて描かれているそうです。
『かぐわしき大地』では、エデンの園の禁断の果実は南国風の花になっています。禁断の果実はリンゴというイメージが強いように思うのですが、裸であることを恥じてイチジクの葉で局部を覆ったことから、果実はイチジクだという説もあるようです。ミケランジェロはシスティーナ礼拝堂の天井画で、イチジクを描いています。
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ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)
『アダムとイヴの原罪とエデンからの追放』
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葉っぱの形状でイチジクだと分かりますね。ゴーギャンの『異国のエヴァ』の木の方も、果実の大きさ、葉っぱの形から、イチジクに見えるのですがどうでしょうか?
そして、エヴァ(イヴ)をそそのかすヘビは、小さなドラゴンのような赤い翼をもったトカゲになっていますね。ヘビがエヴァに囁いたように、トカゲが少女テフラに何か囁いているようにも見えます。このトカゲ、赤い翼はさすがにないようなのですが、タヒチに生息するトカゲなんだそうですョ。
ところで、大地の色、かなり独特だと思いませんか?境目がはっきりしていて、まるで切って張ったようです。この頃ゴーギャンは、クロワゾニスム(平坦な色面と輪郭線を特徴とする描き方)に向かっていました。中世の七宝焼きから来ている装飾技法のようです。(※クロワゾネとは有線七宝のことです。)また、ゴーギャンは 日本の浮世絵の影響も強く受けているようですョ。
1892年、『かぐわしき大地』と同じ頃に、少女テフラをモデルとして描かれた作品が他にもあります。
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ポール・ゴーギャン
『死霊が見ている』1892
死霊とは穏やかではありませんが、ゴーギャンは「生命」というものについて深く考えた人生だったように思います。タヒチ滞在期に、『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか』という集大成的な作品を残しています。
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ポール・ゴーギャン
『 我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか 』1897-1898