白黒写真のような版画ですね。
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エドヴァルト・ムンク(1863-1944)
『自画像』1895
石版(リトグラフ)
【鑑賞の小ネタ】
・1895年は不吉な作品が多い
・手がスケルトン
・ムンク32歳にしては疲れた印象
・まるで遺影のような自画像
1895年あたりのムンクの作品は、とにかく危うい感じのものが多いです。生と死、愛とは何か?というような、かなり重いテーマを常に考えていたのではないでしょうか。
家族内では、1895年に、父親と同じく医者になっていた弟が肺炎で亡くなり、妹が精神病で入院を続けていたりと、なかなか大変な時期だったようです。弟の死は、かなりショックだったのではないでしょうか。
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写真と見比べてみても、かなり忠実に描かれていることが分かります。版画の方が疲れた印象ではありますが。1895年に描かれた別の自画像がこちら。
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エドヴァルト・ムンク
『煙草を持つ自画像』1895
なんかすごい雰囲気ですよね。色んな思いを感じ取れるような作品だと思います。白黒の『自画像』について、NHK放送の「日曜美術館」で、まるで墓標のようだと語られていました。版画の上部に、ムンクの名前と1895の文字が刻まれています。作品にサインと制作年を書き込むこと自体は普通なのですが、本作品のような書き込み方はあまり見られないように思います。腕も骸骨ですし。墓標のようだと言われれば、そんな感じもしますね。
有名なムンクの作品『叫び』にしても、ムンクにとっては「生きる」ということ自体がとても大変だったのではないかと思います。