波の表現がすごいですね。
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ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)
『秋の海』1867
【鑑賞の小ネタ】
・遠くにヨット
・これから天気はどうなる?
・ノルマンディの海岸
・クールベは現実を描く画家
・波の白い部分をパレットナイフで描く
波が荒いです。嵐の前なのか後なのか。どう見えるでしょうか?遠くにヨットが描かれています。かなり沖に出ているようですが、高波で戻れないのでしょうか?何れにしても風に左右される帆船なので、この天候だと操縦が難しそうですよね。
クールベはノルマンディの海岸をテーマとした作品を数多く残しています。国立西洋美術館の『波』と構図的にはよく似ています。
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『波』1870
次の2作品は岸に船が描かれています。漁船だと思いますが、よく見ると種類も色々です。
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『嵐の海』1870
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『Vague(波)』1869
どの作品も嵐の雲のようですが、共通して晴れ間(明るい部分)が覗いています。ところで、ノルマンディの海岸と言えば、「エトルタの断崖」が有名です。多くの画家たちがモティーフとして取り上げた場所です。もちろん、クールベも描いています。
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『エトルタの岩』1869
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『エトルタの崖、嵐のあと』1870
大原美術館の作品は、空と海(波)、そしてその場の空気を重視して描いてるように思います。嵐が来るのか去ったのか、どの作品もとても臨場感のある仕上がりとなっています。
まだまだ伝統的な歴史画や風俗画が良しとされていた時代に、クールベは現実をありのままに捉えて表現(写実主義)しようとしました。なかかな受け入れてはもらえなかったようですが、サロン(官展)にもどんどん発表していきました。そんなクールベは、近代絵画の重要な革新者のひとりなんだそうです。後の印象派に大きく影響を及ぼすこととなります。
「嵐」の絵が多いのも、すこし分かったような気がします。クールベが今後の展開を予感していたかどうかは分かりませんが、これから印象派という大きな波が、確実に押し寄せて来るのですから。