美観地区に溶け込む石塀

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大原美術館前の石塀です。

2020年2月撮影 大原美術館の石塀

白壁の蔵屋敷に見事にマッチした石塀だと思います。石の種類は「御影石」です。大原美術館本館と分館の間に「新渓園」という庭園がありますが、1930年に大原美術館が建築される前までは、この石塀の辺りまで庭園だったそうです。大原美術館の現在正門となっている石塀が庭園の入り口で、新渓園の現在の正門は、当時の通用門だったそうです。

2020年2月 大原美術館の石塀と正門

石塀には通常ツタがはっていますが、今は季節的に葉が落ちているので、石塀の様子がよく分ります。石塀と大原美術館の外壁の色に注目してみてください。同系色ですよね。御影石(花崗岩)の色は、白や黒、赤系等、バリエーションに富んでいるのですが、この石塀の色はとても自然な感じの色なので、違和感なく美観地区に溶け込んでいると思います。そして後方の大原美術館の外壁も黄土色のような、石塀に近い色をしています。

石塀と大原美術館の設計者は薬師寺主計(やくしじかずえ)です。岡山県総社市生まれで、陸軍省建築技師として活躍した建築家です。一見、石造りのように見える大原美術館の柱や外壁は、実はコンクリート造りなんだということは、以前の記事でも紹介しました。今回はコンクリートの色についてなのですが、どうやらこのコンクリートの外壁は、色のついた石を粉にし、その粉を混ぜたモルタルで仕上げられているようです。細かく色の調整をしたんですね!御影石の色に合わせたのだと思います。そして、石塀に使用された御影石は、そもそも庭園にあった石積み塀を現在のものに造り替えたと言われています。[参考資料:おかやまの歴史的土木・近現代建築資産HP]

2020年2月撮影 大原美術館の柱と外壁

色はどうでしょうか?もしこれが真っ白だったら、そうでなくても異国風の建築様式なのに、美観地区から浮き上がっていたかもしれません。そもそもそこにあった石(御影石)を石塀にし、その石塀の色に合わせて外壁を塗った結果、両者ともに美観地区に溶け込む外観を実現することができたということだと思います。考え抜かれた仕事振りに感動します。

2020年2月撮影 石塀と喫茶エル・グレコ

大原美術館の側にある「喫茶エル・グレコ」の外壁も違和感なく溶け込んでいます。こちらも薬師寺主計の設計です。全体的に統一感のある仕上がりとなっています。

余談ですが、江戸城の今も残る天守台は、御影石(花崗岩)です。 貴重な石というわけです。すぐに葉っぱが茂ってきますので、今のうちにじっくり石塀も見てほしいものです。