この永久寄託の文字にグッときます。4作品あります。
【鑑賞の小ネタ】
・永久に寄託されている作品
・セザンヌ「風景」は白樺美術館が購入
・ロダン3作品はロダンが白樺美術館へ寄贈
・セザンヌは塗り残す
「白樺美術館」とは、1910年(明治43年)同人誌『白樺』を創刊させたメンバーである武者小路実篤や志賀直哉ら同人達により構想された美術館です。同人誌『白樺』とは、総合芸術雑誌といったところです。1923年の関東大震災により残念ながら廃刊され、それに伴い、「白樺美術館」設立の夢は途絶えてしまいます。
ある時、同人達はロダン特集を企画しました。その際、直接ロダンに会う機会に恵まれました。そしてロダン自作の3作品を寄贈してもらえたそうです。これをきっかけに、美術館建設計画が持ち上がりました。美術作品を収集するために大規模な寄付運動が展開されて、セザンヌの「風景」を購入することができたそうです。
1950年、大原美術館創設20周年式典に武者小路実篤と志賀直哉 が招かれました。自分たちの夢を託すのはこの美術館しかないということで、4作品が寄託されたそうです。これからの日本の芸術について熱く語られたことでしょう。
[参考文献:大原美術館監修『大原美術館で学ぶ美術入門』JTBパブリッシング発行]
「白樺美術館」として開館することはありませんでしたが、「白樺美術館」とあえて表記することで、同人達への敬意のような熱い思いを感じます。そしてこの「永久寄託」、「寄贈」ではなく「寄託」なのです。貰うのではなく、永久に預かって(保管して)おきますからということです。今後おそらく開館することはない「白樺美術館」に対して、預かる(保管する)と言っているのです。素晴らしい心の交流、そして配慮だと思います。筆者はこんな話が大好きです。
ところで、セザンヌの「風景」ですが、白い部分が残っていて、まるで途中辞めのような絵だと思いませんか? これが“セザンヌの塗り残し(余白)”です。セザンヌの作品にはよく見られます。塗り残しが見られる作品をいくつか紹介します。
なかなかの塗り残しぶりですね。でも、なぜだか全体的にバランスがとれているように感じます。そして筆者は、塗り残しがある方が好きなのです。